御茶ノ水「喫茶穂高」――創業70年の山小屋風喫茶と、店主が受け継ぐ江戸の歴史【ELLIの街探訪 第7回】

御茶ノ水「喫茶穂高」――創業70年の山小屋風喫茶と、店主が受け継ぐ江戸の歴史

御茶ノ水駅前の山小屋風の喫茶「穂高」は創業70年。仕立て屋の片隅で母が始めた喫茶を、80歳を過ぎた粟野芳夫さんが妻と長女と守っています。粟野さんはお茶の水の仙台濠を掘った伊達家家臣の子孫。珈琲と、店の外に続く江戸の歴史の話を、フォトグラファーのELLIさんが聞きました。(『本の街』2025年12月号「フォトグラファーELLIの街探訪」第7回)

喫茶穂高の店主・粟野芳夫さん
店主の粟野芳夫さん(写真・伊藤恵理、以下同)

お茶の水訪問の折はまず穂高でおいしい珈琲をいただき、江戸の歴史散歩などを楽しんではいかがだろうか。

「神保町界隈には縁の薄かった」フォトグラファーのELLIさんの7回目の訪問先は、御茶ノ水駅の目の前にある喫茶「穂高」。店主の粟野夫妻からお話を伺いました。

目次

お茶の水に残る江戸城の歴史

お店のこと――仕立て屋の片隅で始まった喫茶

喫茶穂高の外観
山小屋風の喫茶「穂高」の入口

御茶ノ水駅からすぐのところにある古めかしい山小屋風の喫茶「穂高」。創業70年。戦前は店主の父が創業した神田一の仕立て屋、ヤマヤテイラーだった。昭和30年に店主の母、可津(かつ)がテイラーの片隅で喫茶を始めた。山好きで社交的、行動力あふれる女性で、店前からバスで出発するスキーツアーもやっていたほどだ。

喫茶穂高の店内
山小屋風の店内

看板メニュー――マーマレードのトーストと、5種の豆

喫茶穂高のトーストとコーヒー
マーマレードとバターを添えたトーストと、5種の豆を独自に混合したコーヒーが美味しい

店主のこと――伊達家家臣の子孫

兄の早逝を機にサラリーマンを辞め、母の店で働くようになった粟野芳夫さん。80歳を過ぎた今も、妻ののり代さん、長女の奈津子さんと3人で店を守っています。

粟野芳夫さんとのり代さん
話好きで朗らかなオーナーと、陰でしっかりと支えてきた奥様、のり代さん

粟野氏はお茶の水の仙台濠(=神田川)を掘った仙台伊達家の家臣の子孫に当たる。

室町時代に太田道灌が建てた太田姫稲荷神社は、江戸城鬼門を守るため仙台濠の上に遷され、大正期の総武線工事で現在地(三井住友海上本社近く)へ再び移りました。粟野さんはその歴史を引き継ぎ、2006年には伝家の宝刀を太田姫神社に奉納。その2年後には、徳川宗家18代恒孝氏らとともに、小栗上野介忠順の旧宅跡地まで150名の江戸装束の大行列も行いました。

周辺の散歩――聖橋と椋の巨木

穂高のある御茶ノ水駅の近くは、湯島聖堂をはじめ江戸時代から続く文化芸術の地。江戸城外濠に作られたJR中央線・総武線と御茶ノ水駅のホームを、聖橋から見下ろすことができます。

聖橋
ニコライ堂(キリスト教)と、湯島聖堂(儒教)を結ぶ「聖橋」
聖橋の南のたもとの椋の巨木
聖橋の南のたもとには、総武線敷設前に太田姫神社があった証として椋の巨木が残されている

お店データ

▶お店のページ(地図・関連記事)

喫茶 穂高
東京都千代田区神田駿河台4-5-3
電話 03-3292-9654
定休日 日曜・祝日
創業 昭和30年(1955年)
最寄駅 御茶ノ水駅
▶Googleマップで見る
※住所・電話・定休日は『本の街』加盟店一覧(2026年9月号)より。営業時間などは変わることがあります。お出かけ前にお店にご確認ください。

▶あわせて読みたい:コロンビア生まれの書き手が歩く、神田の「時間の層」(喫茶穂高も登場)

フォトグラファーELLIの街探訪 連載一覧

▶連載ページで全回の一覧と、ELLIさんが訪ねた店の地図を見る

◀前回:第6回 ブックハウスカフェ
▶次回:第8回 豆香房

第1回 ランチョン
第2回 アディロンダック・カフェ
第3回 はせ部
第4回 銘茶豊田園&蕎麦処大宣
第5回 @ワンダーJG
第6回 ブックハウスカフェ
第7回 喫茶穂高(この記事)
第8回 豆香房
第9回 萬羽軒
第10回 浅野屋
第11回 山形屋紙店
第12回 喫茶プペ
第13回 お茶の水ホテル昇龍館
第14回 神田淡平
第15回 大喜靴店
第16回 さかいやスポーツ
第17回 富士レコード社

伊藤恵理(いとう・えり/ELLI)
フォトグラファー。『本の街』で「フォトグラファーELLIの街探訪」を連載し、神田・御茶ノ水・神保町の店を毎月訪ね歩いている。


この記事は、神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』2025年12月号(Vol.8)掲載「フォトグラファーELLIの街探訪」第7回(写真と文・伊藤恵理)のご紹介です。

▶【バックナンバー】『本の街』2025年12月号PDFはこちら

『本の街』は1980年創刊。神保町の書店・出版社・喫茶店・ギャラリーとともに、本の街の今を毎月お届けしています。

▶『本の街』のnoteでは、連載のバックナンバーを順次公開しています

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この記事を書いた人

神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』編集部。1980年創刊。毎月10日発行、加盟店を中心に60か所以上で無料配布しています。

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