書店は世界への扉――三省堂書店・亀井崇雄社長が語る「七〇%の再出発」【本の街を紡ぐ人】

書店は世界への扉――三省堂書店・亀井崇雄社長インタビュー第1回

「本で勝負する」――2026年3月19日にリニューアルオープンする三省堂書店神田神保町本店。書籍売り場はかつての七〇%。その数字に込めた覚悟を、亀井崇雄社長に聞きました。(『本の街』2026年2月号「本の街を紡ぐ人」三省堂書店社長インタビュー第一回)

インタビューに答える亀井崇雄社長
「本の街」神保町の顔、三省堂書店新本店がオープンする。亀井崇雄社長に新しい店にかける思いを聞いた。

神保町の真ん中で、書店を「続ける」ということ

書店を取り巻く環境が厳しさを増す中、二〇二六年三月一九日「三省堂書店神田神保町本店」がリニューアルオープンする。書籍売り場の面積はかつての七〇%。「小さくなった」ことに焦点をあてる人もいるが、この『七〇%の再出発』には、採算を確保しながら、本と神保町の文化を守り続けるという最大限の意思表示が込められていた。神保町の一丁目一番地において「本で勝負する」覚悟とは――。

説明会は一つの区切りだった

二〇二五年一二月一日、出版社クラブで行われた説明会には、出版業界関係者約二〇〇名が来場し、オンラインでは約四〇〇名が視聴した。亀井社長は「非常に多くの方にご覧いただいて、皆様の期待の高さをひしひしと感じました。とてもありがたい時間でした」と振り返る。

準備は二〇二二年の一時閉店から始まった。「特に説明会で司会を務めた杉本と、共に尽力してきた岡田は、閉店以降ずっと新本店の準備に携わってきました。プロジェクトチームを組んで、都度話し合いながら進めてきたんです」。

説明会は、関係者に向けて『本で勝負する』姿勢を改めて明言する、一つの区切りでもあった。

「少し肩の荷が降りました」と語りつつも、「ここからがスタート。まだまだ大変なことが続くと思います」と、気を引き締める表情を見せた。

書店・図書館を徹底リサーチ

新店舗の建築・内装を手がけたのは、世界的に活躍する建築家・長谷川豪氏。書店の常識にとらわれない全く新しい視点を取り入れるため、亀井社長と長谷川氏は、国内外の書店・図書館を数多く視察した。

「有名建築家が手がけた図書館や、口コミで『内装が素晴らしい』と評価される書店など、様々な事例を一緒に見て回りました」。

こうして、「歩けば、世界がひろがる書店」というコンセプトのもと、神保町の一丁目一番地にふさわしい『書店のあり方』を模索していった。

書棚の前に立つ亀井崇雄社長
三省堂書店の亀井崇雄社長

たとえば、一階にカフェを置く選択肢もあったが、「神保町の中心で、本で勝負する書店」という王道のスタイルを貫いた。

「いろいろな特色ある書店が増えていますが、私たちは『書店の中の王道』を掲げて、あくまで本で戦いますので、出版社の皆様にもご協力をお願いしたいと思っています」「神保町のランドマークという重みを従業員一同もっていまして、あそこで、中途半端な本屋をやることはできないというのは、みんな口をそろえて言います」。

実際の店舗には、これまでの三省堂書店の枠を超えた新しい試みも数多く盛り込まれる予定だ。たとえば、『本との新しい出会い』を提案する企画棚「ようこそ世界の入口へ」、オンラインとリアルをつなぐ「めくる塾」、オリジナルのカフェ空間「喫茶ちそう」、さらには人気マンガとコラボした「ジャンプショップ」など、本だけでなく『体験』の拡張も見据えた構成となっている。

新店舗の書籍売り場面積は、かつての本店の約七〇%となる。この数字を聞いて「縮小した」と受け止める声もあった。だが、それは決して消極的な判断ではない。

『七〇%』のファイティングポーズ

「どれだけのスペースを書店にし、どれだけテナントに貸すか、そのチューニングの中で、大体前の本店の七〇%ぐらいの規模というところで腹をくくったということです」。

それは、『王道の書店を本気で続ける』という最大限の意思表示だった。

「出版業界全体としても、本の街のランドマークである三省堂書店がやめてしまうなんていうことは誰も受け入れられない。今こういう厳しい時代でも、なんとかこの規模で続けていきますよっていう、ギリギリのファイティングポーズです」。

この『七〇%』には、業界を牽引してきた書店としての矜持と、四年間にわたって積み重ねてきた時間の重みが込められていた。

『七〇%の再出発』は、決して縮小ではない。出版業界を象徴する三省堂書店が、神保町という街に根を張って、再び立ち上がることを決めた覚悟が窺えた。

第二回では、この新しい挑戦がどのように社員一人ひとりに共有され、広がっていったのか――『ENTRANCE TO THE WORLD(世界への扉)』というコンセプトに込められた想いを探っていく。(続く)

三省堂書店神田神保町本店の新しいビル
三省堂書店神田神保町本店(2025年12月)

三省堂書店神田神保町本店の概要(2025年12月下旬現在)
1階:店舗
2階:店舗「神保町いちのいち」、文具雑貨
3階:店舗、カフェ、イベント・スペース
4階:「THE ジャンプショップ神保町」
5階から13階:オフィステナント
地上13階建て 延床面積3794坪(12543㎡)
新店舗オープン:令和8年3月19日(木)
小川町仮店舗閉店:令和8年1月31日(土)

亀井崇雄(かめい・たかお)
三省堂書店 代表取締役社長。2026年3月19日、神田神保町本店をリニューアルオープンした。

インタビュー・文=水城凛(みずき・りん)
『本の街』編集部。連載「本の街を紡ぐ人」を担当。

三省堂書店・亀井崇雄社長インタビュー(全3回)
第1回 書店は世界への扉――神保町の真ん中で、書店を「続ける」ということ
第2回 書店の未来は「かけ算」にある
第3回 「書店は街の入り口」――神保町の書店で日本文化を守る


この記事は、神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』2026年2月号(Vol.10)に掲載されたものです。ほかの記事もあわせて、PDFで全文をお読みいただけます。

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この記事を書いた人

神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』編集部。1980年創刊。毎月10日発行、加盟店を中心に60か所以上で無料配布しています。

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