「出版文化イコール日本の文化と言っていいぐらい、今の日本の姿を映し出す鏡のようなもの」。2026年3月19日にリニューアルオープンした三省堂書店神田神保町本店。亀井崇雄社長が語る、書店の役割と、神保町という街への想いです。(『本の街』2026年5月号インタビュー最終回)
「三省堂書店神田神保町本店」は、3月19日、待望のリニューアルオープンを迎えました。長らく神保町のランドマークであり続けてきた書店の再出発です。

本というメディア
さいしょに書店の役割について尋ねると、亀井社長は、
「やっぱり出版文化を守るということですね。その最大の拠点というのは書店だと思います。出版文化イコール日本の文化と言っていいぐらい、今の日本の姿を映し出す鏡のようなものだと思うんです」
と語った。しかし、その出版文化は今、大きな転換期にある。

「マーケットはどんどん縮小して、非常に危うい状況になっている。だからこそ、なんとか業界の皆さんと手を取り合いながら、維持するやり方を探していく。その象徴が神保町本店にならなければいけないと思っています」。
情報を得る手段は、スマートフォンなど様々な媒体に変わった。だが亀井社長は、「スマートフォンは確かに便利です。でも、人がしっかり物事を考えて生きていくためには、本の役割はまだまだ重要だということを伝えていきたいと思っています」。
本の価値は、情報を体系化して理解できる点にあるという。
「スマートフォンでニュースや動画を見ると、どうしても情報が断片的になります。物知りにはなるかもしれないけれど、教養人にはなりづらいというか。本であれば、情報と情報がちゃんとつながって、一つの方面の知識や思想が形成されると思うんです。本は、自分の考えや意思が介在する贅沢なメディアで、そういう意味で、本を読んでいると深みみたいなところも変わってくるのかなと思います」。
リアル書店の魅力についても触れた。
「やっぱり手に取って中身を確認できることですかね。表紙や目次、日本語の文体などを見ながら、自分に合う本かどうか判断できる。それはリアル書店ならではの魅力だと思います」。
神保町の街と書店

話題は神保町という街へと広がった。
亀井社長は三省堂書店の役割を「街の入り口」と表現する。
「ランドマークとして、街の入り口の役割を担えればと思っています。本はあらゆるものとつながる。スポーツの街・小川町とも、楽器の街・お茶の水とも、いろんな形で結びつくことができます」。
書店を起点に街の楽しみが広がる。そんな風景を思い描いているという。
「本を買いに来た人が、知らないうちにスポーツ用品店に寄ったり、カレー屋さんで食事をしたり。街の人のお役に立てる入口のような存在になれたらいいですね」。
最後に亀井社長は、読者へこう呼びかけた。
「神保町は本当に楽しい街です。来るたびに景色も変わるし、書店の売り場も変わる。三省堂書店としても勿論ですけれど、神保町の一員として、街の方々と一緒に、何度でも足を運びたくなる街にしていきたいと思います」。
書店は、世界への入口。そして神保町という街の中でも、知と文化へと続く入口でありたい――そんな思いがにじむ言葉だった。(完)
三省堂書店 神田神保町本店
東京都千代田区神田神保町1-1
2026年3月19日リニューアルオープン
最寄駅 東京メトロ・都営地下鉄 神保町駅
※営業時間は公式サイトでご確認ください
亀井崇雄(かめい・たかお)
三省堂書店 代表取締役社長。2026年3月19日、神田神保町本店をリニューアルオープンした。
インタビュー・文=水城凛(みずき・りん)
『本の街』編集部。連載「本の街を紡ぐ人」を担当。
三省堂書店・亀井崇雄社長インタビュー(全3回)
第1回 書店は世界への扉――神保町の真ん中で、書店を「続ける」ということ
第2回 書店の未来は「かけ算」にある
第3回 「書店は街の入り口」――神保町の書店で日本文化を守る
この記事は、神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』2026年5月号(Vol.13)に掲載されたものです。ほかの記事もあわせて、PDFで全文をお読みいただけます。
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