Jin rocks lime. と英語にした途端、カクテル名は「ジンがライムをロックする」という一文に変わる——イプセン『ヘッダ・ガブラー』を現代のロックバンドの物語に翻案したパルコ劇場の三月公演を、世田谷パブリックシアター館長・高萩宏さんが評します。(『本の街』2026年6月号「カーテンコールは華やかに」第五回)

タイトルに仕掛けられた二重の意味
パルコ劇場の三月公演のタイトルは「ジン・ロック・ライム」。発音し易く、そしてジン・ロックのライム付きという爽やかな飲み物が浮かんでくる。しかし、Jin rocks lime. と英語にした途端、カクテル名でなく「ジンがライムをロックする」と、ある行為を表す文になり、単なる語呂遊びに留まらず、舞台上の具体的な物語を予告する。
そう、この作品はヘンリック・イプセンの『ヘッダ・ガブラー』(毛利三彌訳・論創社・2021年刊)を下敷きに、舞台を現代のロックミュージシャンの物語に仕立てあげたものでした。演出は世田谷パブリックシアター芸術監督の白井晃。美術・照明・映像をよくまとめ上げた、と著者は評します。

ギラギラの冒頭から
主演はアイドルグループHey! Say! JUMPの髙木雄也。ロックのコンサートシーンから始まる冒頭は、ギラギラとシャウトする姿に高木ファンも満足、このまましっかり歌を聞かせてくれるのか――と思わせた一瞬の後、主人公ジンは突然歌を止め、客席のファン(観客)に向き直ります。
舞台奥には広いバルコニーが見える部屋。そこが音楽作りの仕事場兼オフィスとなっており、その下にはライムの木がある。先代社長の故郷である徳島名物の酢橘を植えたという設定です。

相手役となる若きミュージシャン・エートを演じるのは、2.5次元演劇からスタートし、今やミュージカル界のスターとなっている黒羽麻璃央さん。魅力と才能に恵まれた、野心的な若者像を説得力をもって立ち上げた、と記事は書きます。
イプセンの描いた世界の男女を逆転させ、現代のロックミュージック界における愛と才能を描き出した舞台。物語がどこへ向かうのかは、記事全文でお読みください。6月号PDFでご覧いただけます。
高萩宏(たかはぎ・ひろし)
1953年生まれ。世田谷パブリックシアター館長。東京芸術劇場副館長などを歴任し、日本の公共劇場の運営に長く携わる。著書に『僕と演劇と夢の遊眠社』。『本の街』で「カーテンコールは華やかに」を連載中。
この記事は、神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』2026年6月号(Vol.14)掲載、高萩宏さん(世田谷パブリックシアター館長)の連載「カーテンコールは華やかに」第五回のご紹介です。
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