厚さ二〇センチの鋼鉄製の扉に守られた執務室で、トロツキーはピッケルに倒れた。そして「インターナショナル」を日本語に訳した演出家・佐野碩は、同じ頃メキシコに亡命していた——加藤哲郎さんが現地を訪ね歩いた記録です。(『本の街』2026年6月号「国際歴史探偵の書斎から」第八回)
映画に描かれたトロツキー暗殺事件

記事はまず、一本の映画から始まります。アラン・ドロン主演の『暗殺者のメロディ』(1972年)。原作・脚本はニコラス・モズレー、ロケの舞台はメキシコ・シティ。
ともにアメリカ人であるが、ロケの舞台はメキシコ・シティ、映画冒頭の一九四〇年メーデー行進では革命歌「インターナショナル」がスペイン語で歌われる。
アラン・ドロンが演じたのは、トロツキーをピッケルで殺した男。実際の暗殺者ラモン・メルカデルは犯行後すぐに捕まり、刑期満了後にソ連へ渡って「ソ連邦英雄・レーニン勲章」を授与され、晩年はキューバに移り寂しく死んだ――と記事は伝えます。


「インターナショナル」の日本語訳詞者
ここで、もうひとりの主役が登場します。
革命歌「インターナショナル」の日本語訳詞者、「起て飢えたるもの、今ぞ日は近し」と始まる、これは、演出家佐野碩の作詞である。

佐野碩は、トロツキーと同じ頃にメキシコで亡命生活を送っていた人物。記事は、彼がメキシコ革命以来の壁画運動や革命宮殿、そしてトロツキー暗殺との距離を丹念にたどっていきます。
著者自身がメキシコを訪ね歩いた記録でもあります。コヨアカンのフリーダ・カーロ美術館、そして中心部で発掘された古代遺跡テンプロマヨール。


佐野碩がトロツキー暗殺にどう関わったのか――記事の結びで著者は、その問いを性急に決着させず、スターリン派もトロツキー派も芸術家たちも入り乱れていた当時のメキシコという場そのものを読み解こうとします。
記事全文と、著者が現地で撮影した写真は、6月号PDFでご覧いただけます。
加藤哲郎(かとう・てつろう)
1947年生まれ。一橋大学名誉教授・政治学。日本およびソ連・コミンテルンの政治史を研究。著書に『ゾルゲ事件』『「飽食した悪魔」の戦後』など。『本の街』では「国際歴史探偵の書斎から」を連載中。
この記事は、神田・御茶ノ水・神保町の地域交流サロン誌『本の街』2026年6月号(Vol.14)掲載、加藤哲郎さん(一橋大学名誉教授・政治学)の連載「国際歴史探偵の書斎から」第八回のご紹介です。
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